津地方裁判所 昭和43年(わ)46号 判決 1968年5月14日
本籍
三重県津市柳山津興一、六四六番地
住居
右同所
養鶏業
吉田定吉
大正四年九月一六日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官村林久男出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一〇月および罰金四〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は津市柳山津興一、六四六番地において養鶏業を営むかたわら貸企業を行つている者であるが、所得税をまぬがれようと企て、貸金の収入利息を架空名義預金等に秘匿し
第一、昭和三九年度(昭和三九〃一月三一日から同年一二月三一日まで)の真実の総所得金額が八三六万九、五二〇円で、これに対する所得税額が三〇四万六、二〇〇円であるのに、昭和四〇年三月一五日津市下部田所在の所轄津税務署において、同税務署長に対し、同年度の所得金額が八六万七、九五〇円でこれに対する所得税額が五、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年度の所得税三〇四万〇、八〇〇円を免れて逋脱した
第二、昭和四〇年度(昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日まで)の真実の総所得金額が一、二九八万五七一〇円で、これに対する所得税額が五五五万円であるのに、昭和四一年三月九日同税務署において、同税務署長に対し同年度の所得金額が三六万八、五六二円でこれに対する所得税額七、二〇〇円の還付を受ける旨の虚偽の所得税額確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年度の所得税五五五万円を免れて逋脱した。
第三、昭和四一年度(昭和四一年一月一日から同年一二月三一日まで)の真実の総所得金額が一、四七四万七、五四七円で、これに対する所得税額が六四三万五、八〇〇円であるのに、昭和四二年三月四日同税務署において、同税務署長に対し、同年度の所得金額が六四万八、五〇〇円これに対する所得税額一万四、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年度の所得税六四二万一、五〇〇円を免れて逋脱し
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書
一、大蔵事務官の被告人に対する質問てん末書一二通
一、野村宏彦の検察官に対する供述調書
一、中浜広治の検察官に対する供述調書謄本
一、近藤新三郎の検察官に対する供述調書謄本
一、大蔵事務官の近藤新三郎に対する質問てん末書二通
一、大蔵事務官の中浜広治に対する質問てん末書
一、大蔵事務官の朝井長一に対する質問てん末書
一、昭和四二年一二月四日付被告人作成の上申書
一、昭和四二年七月二二日付株式会社百五銀行橋南支店川本繁作成の証明書四綴
一、昭和四二年六月一五日付株式会社百五銀行橋南支店川瀬弘作成の元帖写
一、昭和四二年八月一六日付株式会社百五銀行橋南支店川本繁作成の元帖写
一、昭和四二年一〇月二四日付株式会社百五銀行津新町支店林兵吾作成の手形貸付金元帳写、手形貸付担保品元帳写
一、昭和四二年一二月五日付津信用金庫橋南支店田上千太郎作成の原本写
一、昭和四二年九月七日付鈴木敏生作成の上申書
一、昭和四二年九月七日付斎藤孰作成の上申書
一、昭和四二年八月二二日付川崎製鉄株式会社株式課甲谷義博西田彰郎作成の回答書
一、昭和四二年八月二四日付グンゼ株式会社株式課綾部分室村上正己作成の回答書
一、昭和四二年八月一七日付名糖産業株式会社総務部長森野要作成の回答書
一、昭和四二年八月一八日付株式会社大隈鉄工所総務課株式係山川勝史作成の回答書
一、昭和四二年八月一八日付津信用金庫伊藤美雄作成の回答書
一、昭和四二年八月二一日付仙波清則作成の回答書
一、昭和四二年八月二一日付日活株式会社株式係宮長生成作の回答書
一、昭和四二年九月一三日付中央信託銀行株式会社証券代行部管理課作成の回答書
一、昭和四二年八月二二日付川崎重工業株式会社株式課斉藤隆春作成の回答書
一、昭和四二年八月二二日付三井信託銀行株式会社証券代行部小野邦康作成の回答書
一、昭和四二年八月二二日付三楽オーシヤン株式会社株式課長杉山由治郎作成の回答書
一、昭和四二年八月二二日付三菱電機株式会社総務部西川昭一作成の回答書
一、昭和四二年八月二二日付中央信託銀行株式会社証券代行部管理課作成の回答書
一、昭和四二年八月二二日付小野田セメント株式会社阿波恭子作成の回答書
一、昭和四二年八月二三日付アイシン精機株式会社宮田徳一郎作成の回答書
一、昭和四二年八月二三日付三洋電機株式会社渡辺和正作成の回答書
一、昭和四二年八月二三日付三井物産株式会社文書部株式課小山研三作成の回答書
一、日平産業株式会社野田聖作成の回答書
一、昭和四二年八月二五日付中央信託銀行株式会社証券代行部神田分室管理課斉藤隼男作成の回答書二通
一、昭和四二年八月二五日付三菱信託銀行株式会社証券代行部森民雄作成の回答書
一、昭和四二年八月二八日付三井信託銀行株式会社証券代行部作成の回答書二通
一、昭和四二年八月二八日付富士電機製造株式会社橋本富之助作成の回答書
一、昭和四二年八月二八日付中央信託銀行株式会社証券代行部神田分室管理課近藤和行作成の回答書
一、昭和四二年八月二九日付三菱信託銀行株式会社証券代行部野中敏子作成の回答書
一、昭和四二年八月二九日付、同年一二月一一日付中央信託銀行株式会社大阪支店証券代行部管理課作成の回答書(株式の名義書換え配当金の支払明細および株式の増資に対する新株引受けについて)二通
一、昭和四二年八月三一日付東洋信託銀行株式会社花崎康子作成の回答書五通
一、神崎製紙株式会社矢部美以子作成の回答書
一、昭和四二年九月一日付三菱信託銀行株式会社証券代行部永野盾夫作成の回答書
一、昭和四二年九月四日付安田信託銀行株式会社証券代行部登録課作成の回答書
一、昭和四二年九月四日付大阪証券代行株式会社代行部課今井悦郎作成の回答書
一、昭和四二年九月五日付東洋信託銀行株式会社大阪支店福山茂作成の回答書
一、昭和四二年九月四日付中央信託銀行株式会社大阪支店証券代行部管理課作成の回答書三通(株式の名義書換え配当金の支払明細および株式の増資に対する新株引受けについて)
一、昭和四二年九月一一日付中央信託銀行株式会社名古屋支店証券代行部鈴木昇作成の回答書
一、昭和四二年九月二〇日付東洋信託銀行株式会社大阪支店証券代行部福山茂作成の回答書
一、昭和四二年九月二六日付安田信託銀行株式会社証券代行部登録課田島節子作成の回答書
一、昭和四二年九月二七日付菱和飼料株式会社三田勝造作成の回答書
一、昭和四二年一〇月三日付東洋信託銀行株式会社大阪支店証券代行部作成の回答書
一、昭和四二年一〇月一三日付東洋信託銀行株式会社大阪支店山根正剛作成の回答書二通
一、昭和四二年一〇月二四日付中央信託銀行株式会社証券代行部神田分室管理課野地利郎作成の回答書
一、昭和四二年一一月一八日付津市長作成の市県民税納付状況等の証明書
一、押収にかかる貸金及び財産明細帳一冊(昭和四三年押第一九号証第一号)、判取帳一冊(前同押号証第二号)、保証書等綴一綴(前同押号証第三号)
判示第一について
一、渡辺且利作成の脱税額計算書(昭和三九年分)
一、渡辺且利作成の脱税額計算書説明資料(昭和三九年分)
一、津税務署長岡本吉司作成の証明書(三九年分の所得税の確定申告書写)
一、津税務署長岡本吉司作成の証明書(三九年分の所得税の修正申告書写)
一、昭和四二年一二月六日付津税務署長岡本吉司作成の所得税納付状況証明書(昭和三八年分、昭和三九年分)二通
一、昭和四三年一月一九日付津税務署長岡本吉司作成の所得税納付状況証明書(昭和三九年分)
一、昭和四二年一二月六日付津税務署長岡本吉司作成の納付証明書(昭和三九年分)
一、昭和四二年八月一二日付津信用金庫橋南支店矢戸泰子作成の普通預金元帳写
一、昭和四二年七月二〇日付前田武作成の上申書
一、押収にかかる手形受払帳一冊(昭和四三年押第一九号証第五号)、元帳の内支払手形勘定分綴一綴(前同押号証第六号)、手紙一通(前同押号証第七号)、入金表一綴(前同押号証第八号)
判示第二について
一、大蔵事務官の丹羽進に対する質問てん末書
一、大蔵事務官の山本岩太郎に対する質問てん末書
一、大蔵事務官渡辺且利作成の脱税作成の脱税計算書(昭和四〇年分)
一、大蔵事務官渡辺且利作成の脱税額計算書説明資料(昭和四〇年分)
一、津税務署長岡本吉司作成の証明書(四〇年分の所得税の確定申告書)
一、津税務署岡本吉司作成の所得税納付状況証明書(昭和四〇年分)
一、津税務署長岡本吉司作成の納付証明書(昭和四〇年分)
一、昭和四三年四月五日付吉田定吉作成の仮還付請書
一、弁護士高橋通夫作成の本月現在期日到来済手形謄本四九通
一、三重県種鶏改良農業協同組合組合理事長高須武雄作成の証明書
一、押収にかかる領収証、計算書綴一綴(昭和四三年押第一九号証第四号)、手形受払帳一冊(前同押号証第五号)、元帳の内支払手形勘定分綴一綴(前同押号証第六号)、手紙一通(前同押号証第七号)、借入明細メモ帳一冊(前同押号証第九号)、昭和四〇年養鶏一般書類綴一綴(前同押号証第一〇号)
判示第三について
一、大蔵事務官渡辺且利作成の脱税計算書(昭和四一年分)
一、大蔵事務官渡辺且利作成の脱税額計算書説明資料(昭和四一年分)
一、津脱税務署長岡本吉司作成の証明書(四一年分の所得税確定申告書)
一、昭和四二年七月二〇日付前田武作成の上申書
一、昭和四二年八月一日付郡芳栄作成の上申書
一、昭和四二年九月二六日付中村好一作成の上申書
一、三重県種鶏改良農業協同組合理事長高須武雄作成の証明書
一、押収にかかる入金表一綴(昭和四三年押第一九号証第八号)、昭和四一年養鶏一般書類綴一冊(前同押号証第一一号)
(法令の適用)
法律に照すると被告人の判示第一の所為は昭和四〇年三月三一日法律第三三号附則第三五条、同法律による改正前の所得税法第六九条第一項後段、罰金等臨時措置法第二条第一項に、判示第二、第三の各所為は所得税法(昭和四〇年三月三一日附法律第三三号)第二三八条第一項後段、罰金等臨時措置法第二条第一項に各該当するところ、いずれも懲役刑と罰金罪を併科する場合を選び、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重いと認められる判示第三の罪の刑に法定の加重をなし、罰金刑については同法第四八条第二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内において被告人を懲役一〇月および罰金四〇〇万円に処し、被告人において右罰金を完納することのできないときは刑法第一八条により金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、なお情状により同法第二五条第一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 高沢新七)